本文
明日よ、明日よ、
そなたはわたしの前にあって
まだ踏まぬ未来の
不可思議の路(みち)である。
どんなに苦しい日にも、わたしは
そなたに憬(こが)れて励(はげ)み、
どんなに楽しい日にも、わたしは
そなたを望んで踊りあがる。
明日よ、明日よ、
死と飢えとに追はれて歩くわたしは
たびたびそなたに失望する。
そなたがやがて平凡な今日に変り
灰色をした昨日になってゆくのを
いつも、いつもわたしは恨んで居る。
そなたこそ人を釣る好(よ)い香(にほひ)の餌だ、
光に似た煙だと咀(のろ)ふことさへある。
けれど、わたしはそなたを頼んで、
祭の前夜の子供のやうに
「明日よ、明日よ」と歌ふ。
わたしの前には
まだまだ新しい無限の明日がある。
よしや、そなたが涙を、悔(くい)を、愛を、
名を、歓楽を、何を持って来やうとも、
そなたこそ今日のわたしを引く力である。