おはなし
死んだらどうなるの?
「死んだらどうなるの?」子供たちの素朴な疑問に親も考えます。
第1回 優しいお話投稿コンテスト最優秀作品
- 文:水戸ゆう子
- 声:とうぷ♥(koebu)
本文
テレビをみながらごろんとしていると長男が 神妙な顔で近づいてきた。
「ねえ、ママ、死んだら体を焼くって本当?」
なんだなんだ? あわてて身体を起こす私。
「T君が言ってたんだけど、死んだら病院で体を ばらばらにして色々調べるんだってね・・。
そのあと体をすごい火で焼くんだってね・・・」
こいつら小学校で何を話しているんだ??
可笑しいやら何やらで噴出しそうになった。
長男は小学3年生になったばかりだ。
「T君が言ってたんだけど、田舎の方では死んだら、そのまま土に埋めるところもあるんだって・・。 そうすると、うじ虫が体を食べるんだって。
そんなの嫌だから焼いてもらったほうがましなのさ、ってT君が言うんだ・・・」
T君?ああ、あの頭のいい、活発なあの男の子・・。
どう答えようかと「う~ん」などと曖昧に相槌をうっていると、長男は静かな、それでいて強い口調でたたみかけてくる。
「ねえ・・ママ、みんないつかは死ぬんだよね。僕のことも焼くの?」
ん?長男の顔を改めてみてみるとまったくもって真剣そのものだ。
それまでは暗い声で質問をしてくる長男を面白おかしく眺めていたのだが、 このちびたんは今、生まれて初めて人間の生死を 意識してる。
これは大変なことかも。
私は今まで読んできた本の中身なんかを思い返し、何か良い言葉がないかと考えた。
長男の心にひびく素敵な言葉はないものか、なんかないか、どうにかで出てこないか、私にはないのか?大人として恥ずかしくない人生の指針とやらは!と 必死に考えてみたんだけれど、
・・・・何もなかった。
「あんたが死んだら、ママが食べる!」
口から飛び出した言葉に、我ながらびっくりしてしまった。
あなたがとても大切だ、ということをどうしても伝えたかったのだ。
でも失敗だった。
長男は心底ギョっとした様子だった。
「ええっ?なんで?僕を喰うの?」
「そう!ママ、あんた達が死んだら食べるよ。 お医者さんにいじられたり、焼かれたり、そんなの嫌だから!」
「だって、骨どうすんの!?」
どうやら焼かれるののもいやだが、食べられるのも嫌なようだ。
「大丈夫、ママ、歯はが丈夫だから!!頭からばりばり噛むよ」
もう後にはひけない状態の私は少し意地になって食人宣言を続けた。
横でぼんやりしていた4歳の次男は
「頭からばりばり食べる」という言葉に恐れおののいたようだった。
「嫌だよ!!そしたら僕たちママのうんこになっちゃうじゃんか!!」
一瞬の沈黙の後、3人で大笑い。
長男と次男をぎゅうっと抱きしめたら太陽のにおい。砂っぽくて、汗臭くて。
こりゃあ食べたらまずそうだ、と思い、幸せに胸が詰まりそうになった。