- 文:東方明珠
- 声:川本知枝
- 絵:森のくじら
- アニメ:ゆめある
- 原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)
本文
むかしむかしの おはなしです。
あひるの おかあさんが たまごを あたためて いました。
かわいい きいろの ひなが つぎつぎに うまれます。
ところが いっぴきだけ でぶっちょで はいいろ でした。
「まあ みにくい。きっと しちめんちょうのこ ですよ」
おばさん あひるが おしりを つつきました。
「まさか。このこは およぎが じょうずだもの」
おかあさん あひるは ひなを かばってくれました。
ところが、「あっちへ いけ」
きょうだいたちは いつも いじわるを します。
とうとう おかあさんも ためいきを つきました。
「どこか とおくへ いって くれないかしら」
みにくい あひるのこは かなしくて たまりません。
「そとの せかいへ いこう」
いえを とびだしました。
くたくたに なったころ、にわとりと であいました。
「おまえは たまごを うめるかい?」
「うめないよ」
にわとりは げらげら わらいました。
「やくたたずだね」
みにくい あひるのこは なきながら にげました。
かもには ばかにされ、いぬには ほえられ
どこへ いっても いじめられました。
ふゆに なっても ひとりぼっちでした。
かれた はっぱに くるまって ゆきの よるを すごしました。
はるに なりました。
みずうみに まっしろな とりが おりてきました。
「ぼくと ちがって きれいだな」
みにくい あひるのこは ふらりと ちかづきました。
きらきら かがやく みなもに
まっしろで すらりとした うつくしい とりが うつっています。
「これは ぼく?」
つばさを ひろげてみました。
からだが ふわりと うきあがります。
みにくい あひるのこは はくちょう だったのです。
「あなたが いちばん きれいよ」
なかまが やさしく なでてくれました。
はくちょうのこは とても うれしく おもいました。