おはなし
へっこきよめさん
大きなオナラをしてしまうお嫁さんのクスッと笑える昔話。
- 文:東方明珠
- 声:川本知枝
- 絵:みのもまりか
本文
むかしむかし ある むらに
とおくの むらから よめが きた。
よめさん げんきで やさしくて おまけに とても はたらいた。
「にっぽん いちの よめさんじゃ」
おっかさんも むすこも よろこんだ。
ところが、あるひ よめさんが うんうん うなって くるしそう。
「おら 『へ』がしたくて たまんねえ」
おっかさんは おおわらい。
「なあんだ そんなの きに すんな。『へ』ぐらい がまん しないで せえ」
「うれしい。そんじゃ、えんりょなく」
よめさん とっても よろこんで、ぷりっと おしりを つきだした。
『ぼっかーん!』
あんまり おならが おおきくて てんじょう ぜんぶ ふっとんだ。
つづいて にはつめの おなら。
『ぶぶぶ ぼっかーん!』
おっかさん まで とんでった。
「なんて あぶねえ よめさんじゃ」
むすこは おこって いったとさ。
「じぶんの むらに かえるんじゃ。おくって いくから ついてこい」
よめさん いえを おいだされ、とぼとぼ あとを ついてった。
とうげを みっつ こえた さき、おおきな なしの きが あった。
おなかを すかせた とのさまが とおりすがって いったとさ。
「なんて うまそうな なしの みじゃ。だれでも いいから とってこい」
なしの き たかくて とどかない。
けらいは みんな こまったと。
そこへ よめさん もうしでた。
「おらが おやくに たちましょう」
ぷりっと おしりを つきだして おおきな おおきな へを こいた。
『ぼっかーん!』
なしの み ぜーんぶ おっこちて あたりは あまい いい かおり。
「へで おとすとは あっぱれじゃ」
とのさま たっぷり ほうびを くれた。
むすこは よめに あやまった。
「すまねえ。おまえを みなおした。いっしょに もどって くれるかい?」
いえに かえった よめさんは こやを たてて もらったよ。
かたくて ちいさな へこき ごや。
いつしか 『へや』と よばれたと。