おはなし

サルの手

願い事を三つ叶えてくれるという魔力を持つ「サルの手」を手に入れたばかりに不幸になっていく家族のお話。
とても怖いお話なので、小学校高学年以上を推奨します。

くわしくみる

本文

これは 世にも ふしぎな おはなしです。
つめたい 雨の ふる日、ホワイトさんの 家に ふるい 友人が たずねてきました。
「インドで ふしぎな ものを 見つけましてね」
友人は サルの手の ミイラを とり出しました。
「こいつは 3つの ねがいを かなえてくれるんです」

「おもしろい。ぜひとも ゆずってくれ」
ホワイトさんは つよく おねがいしました。
友人は しぶしぶ さしだしました。
「ただし、むりやり うんめいを かえると、たいへんな ことが おきますよ」

「どんな おねがいを しようかな」
ホワイトさんが つぶやくと、むすこが 言いました。
「200ポンド くださいって たのんだら?
 家の しゃっきんが ぜんぶ かえせるよ」

「いい かんがえだ」
ホワイトさんは サルの手に おねがいしました。
すると、サルの手は きみわるく ぐにゃりと うごきました。

つぎの日、「たいへんだ。むすこさんが じこに まきこまれたぞ」
ホワイトさんは おどろいて むすこの かいしゃへ いきました。
むすこは ひどい すがたで なくなって いました。
しごと中、きかいに はさまれたのでした。
「これは おわびです」
かいしゃは ホワイトさんに 200ポンドの おかねを くれました。

「ひどいわ。200ポンドの かわりに むすこを うしなうなんて」
おくさんは たいへん かなしみました。
そして、ホワイトさんに 言いました。

「サルの手に あの子を 生きかえらせて ほしいと 言ってちょうだい」
おくさんが とても なくので、ホワイトさんは ことわれませんでした。
「むすこを 生きかえらせて おくれ」
そのとたん、サルの手は とびはねるように ゆかへ ころがりおちました。

しばらくして、トントン、トントン。
だれかが ドアを たたいています。
「あの子だわ」
おくさんは よろこんで ドアへ かけていきました。
「おはかの 中から もどってきて くれたのね」

そのとたん、ホワイトさんは むすこの さいごの すがたを 思い出しました。
きかいに はさまれた ひどい ようすを。
ドアが あいてしまったら、そこには きっと……。
ガチャ、ガチャ、ギィ。

ホワイトさんは ひっしになって さけびました。
「むすこを おはかの 中へ もどしてくれ!」

ドアが ひらいて つめたい かぜが どっと ふきこんできました。
だれも、いません。
ホワイトさんの さいごの ねがいは かなえられたのでした。

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