おはなし
トイレの花子さん
学校のトイレにまつわる怖いお話。
奥から三ばん目のとびらをノックして名前を呼ぶと…。
とても怖いお話なので、小学校高学年以上を推奨します。
- 文:東方明珠
- 声:川本知枝
- 絵/アニメ:夢山イラスト
本文
これは 世にも ふしぎな おはなしです。
エリちゃんの 学校には こんな うわさが ありました。
「二かいの 北こうしゃの 女子トイレに 花子さんが 出るんだって」
ともだちの サキちゃんが ぶるっと ふるえて 言いました。
「そんな こ クラスに いた?」
エリちゃんは くびを かしげました。
しらない なまえです。
「ちがうよ、ゆうれいだよ」
サキちゃんは りょうてを にぎりしめました。
「エリちゃん、こわいから いっしょに ついてきて」
なんでも おくから 三ばん目の とびらを ノックして なまえを よぶと
中から へんじが かえってくる そうです。
女子トイレに つきました。
「サキちゃんは こわがりやさん だなあ」
ゆうれいなんて いるはず ありません。
エリちゃんは ふざけて 三ばん目の とびらを ノックしました。
トン トン
あわてて サキちゃんが とめました。
「やめなよ! 花子さんに あった 子は しんじゃう らしいよ」
「まさか」
そのときです。
三ばん目の とびらの 中から いきおいよく 水の 音が しました。
だれも いない はずなのに。
「出たー!」
サキちゃんは はしって にげていきました。
エリちゃんは ふしぎで たまりませんでした。
「やっぱり きになる」
ほうかご、エリちゃんは だれも いなくなった 女子トイレに やってきました。
さっきのは ぐうぜんに ちがいありません。
三ばん目の とびらの まえに 立ち、耳を すませました。
なんの 音も きこえません。
だれも いないのを たしかめて、とびらを ノックしました。
トン トン トン
大きく いきを すって ゆっくりと なまえを よびます。
「花子さーん」
すると――
ギィ……。
とびらが ひとりでに ひらきました。
「はーい」
そこには あかい スカートを はいた おかっぱ あたまの 女の子が いました。
エリちゃんは びっくりして うごけません。
さけびごえも 出ませんでした。
どうやら かなしばりに あった ようです。
女の子は にたりと わらって 言いました。
「いっしょに あそびましょ」
女の子の つめたい 手が エリちゃんの くびを つかみました。
つぎの 日の あさ。
「エリちゃんは お休みかな?」
からっぽの つくえを 見て サキちゃんは つぶやきました。
「きのうは あんなに げんき だったのに」
そのご エリちゃんの すがたを みた 子は ひとりも いなかったそうです。