おはなし

モスマン

謎の生物、蛾人間モスマン。
巨大で恐ろしいモンスターに襲われた家族の結末は…。
とても怖いお話なので、小学校高学年以上を推奨します。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:須田勝也(コトリボイス)
  • 絵:中田喜久

本文

これは 世にも ふしぎな おはなしです。
ここは アメリカの 小さな 町。
マリーは かぞくで ドライブを たのしんで いました。
「おとうさん、ふくろうが いるよ」
マリーは 川の むこうを ゆびさしました。

ずんぐり とした はいいろの 体には あたまが なくて、 むねの ぶぶんに 赤い目が ぎらぎら ひかっています。
おとうさんは くびを かしげて 言いました。
「ふくろうにしては ずいぶん 大きいなあ」

はねを ひろげたら 2メートルは ありそうです。
「きみが わるいわ。はやく かえりましょう」
おかあさんは 車を ぎゅんと 走らせました。

「キィ!」
耳が いたくなるような なき声が しました。
ふりむくと、車の すぐうしろに はいいろの かいぶつが いました。
大きな はねを はばたかせもせず、じめんを すべるように おってきます。

「もっと スピードを 出して」
マリーは こわくなって さけびました。
「もう 160キロよ!」
おかあさんも ひっしに 車を 走らせました。

町の はずれに つきました。
かいぶつの すがたは 見えません。
どうやら にげきれた ようです。
「そんなに あわてて どうしたんだね?」
しんせつな おじいさんが たずねてきました。

「じつは……」
マリーが わけを はなすと、おじいさんは 言いました。
「それは のろいの ガ人間、モスマンじゃよ。気をつけなされ」
なんでも、モスマンを 見た ものは ふこうに なるそうです。
「二どと あの はしには 行かないわ」
おかあさんが 言いました。
マリーも おとうさんも ふかく うなずきました。

その日の よなか、 マリーは はげしい ゆれを かんじて 目を さましました。
ベッドや タンス、つくえや いすが へやの 中で ぐるぐる まわっています。
ポルターガイストです。

(たすけて)
いくら さけんでも 声が 出ません。
ようやく しずまったころには よが 明けていました。

外へ 出ると、となりの いえの おくさんが ないていました。
足もとには かい犬の したいが ころがっています。
「よなかに あんまり なくから 見にいったら、はねの はえた かいぶつが いたのよ」
きっと モスマンの しわざでしょう。
マリーは おそろしく なりました。

いっかは ひっこしを きめました。
しかし、町の 外に 出るには どうしても あの はしを わたらなくては なりません。
「ひるまなら きっと だいじょうぶだよ」
おとうさんが 言いました。

はしの 上には 十すうだいの 車が 走っています。
マリーたちの 車が ちょうど まん中に さしかかった ときでした。
バキ バキ バキ……。
なにかが さけるような 音がして、はげしい じひびきが なりわたりました。
はしは ねもとから くずれおちました。
この日、たくさんの ひとびとが モスマンの のろいの ぎせいに なったのでした。

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