おはなし

手袋を買いに

雪の街の中、子ぎつねが手袋を買いに行く、とっても可愛いお話。
「ごんぎつね」でおなじみの新見南吉の原作のお話です。

くわしくみる

  • 文:東方明珠
  • 声:川本知枝
  • 絵:紺島
  • 原作:新美南吉

本文

むかしむかしの おはなしです。
きつねの おやこが すむ もりに ふゆが やってきました。

「まっしろだあ」
はじめて ゆきを みた こぎつねは むちゅうで あそびました。

いつのまにか てが まっかです。
「かあちゃん おててが つめたい」
かあさんぎつねは いいました。
「てぶくろを かって あげましょうね」

その よる。
おやこは まちへ おりていきました。
けれども とちゅうで、かあさんぎつねの あしは とまって しまいました。

ずっと むかし、あひるを ぬすもうとして にんげんに おいかけられた ことが あったのです。
こわくて いっぽも うごけません。
しかたなく ぼうや ひとりで いかせることに しました。

「おててを かたほう だして」
かあさんぎつねは まほうで ぼうやの みぎてを にんげんの てに かえました。
「おみせに ついたら とびらを ちょっとだけ あけて、

『この てに ぴったりの てぶくろを ちょうだい』って いうのよ」
「どうして」
「きつねと わかったら つかまって しまうからね」

ぼうやは いわれた とおり、とびらを ほんの すこし あけました。
ところが、
「わっ、まぶしい」

まちがえて きつねの てを だして しまいました。
「この おててに ぴったりの てぶくろ ください」

ぼうしやさんは すこし かんがえてから いいました。
「さきに おかねを ください」
おかねが ほんものだと わかると、まっかな てぶくろを くれました。

こぎつねは はしって かえりました。
かあさんぎつねは ぼうやを ぎゅっと だきしめて くれました。
「かあちゃん にんげんって こわくないよ」
「ほんとう?」
「きつねの てを だしても、へっちゃら だったんだ」

こぎつねは うれしそうに てを ぷらぷら させました。
「にんげんって ほんとうに いいものかしら……」

かあさんぎつねは ぽつりと つぶやきました。

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