• 文：東方明珠
• 声：藤野 裕規（コトリボイス）
• 絵/アニメ：ゆめある

本文

ひろくんは　てれびが　だいすき。
「はなれて　みなさい」
おかあさんが　ちゅういを　しても　すぐに　わすれて　しまいます。
むちゅうに　なって　どんどん　ちかくへ。
「ちかづきすぎよ」
なんど　いわれても　ちっとも　こりません。

あるひの　こと。
ひろくんは　きょうも　がめんの　ちかくで　てれびを　みていました。
すると　なかで　ちいさな　なにかが　うごきました。
「なんだろう？」
いっぽ　ちかづいて　みます。
さっ。
ちいさい　ひとが　がめんを　よこぎりました。
びっくりして　さらに　めを　ちかづけました。
ささっ。
「おとこのこだ！」
ちいさな　ひとは　ひろくんと　よく　にた　おとこのこ　でした。
ものすごい　はやさで　みぎから　ひだりへ　かけぬけます。

「だれ？」
おとこのこは　こたえて　くれません。
ぽっと　あらわれては　すぐに　すがたを　けして　しまいます。
ひろくんは　てれびに　かおを　くっつけました。

そのときです。
なかから　にゅっと　てが　のびて　きました。
つよい　ちからで　ひっぱられ、しかいが　ぐるりと　まわりました。

「いたた……」
きづくと、めのまえには　ぶあつい　がらすが　あります。
がらすの　むこうには　おかあさんと　さっきの　おとこのこが　います。
ひろくんは　がらすを　たたいて　さけびました。
「おかあさん！」
けれども、きが　つきません。
「おやつに　しましょうか」
「はーい」
おとこのこが　ひろくんの　かわりに　こたえます。
「てれびは　けしましょうね」
おかあさんが　りもこんを　こちらへ　むけました。
「まって！」
ぴっ。
……あたりは　まっくらに　なりました。