• 文：東方明珠
• 絵／アニメ：ゆめある
• 声：村椿玲子

本文

きょうは　あめです。
たくみくんは　あたらしい　かさを　さして　がっこうへ　いきます。
「さすときに　ひとへ　むけちゃ　だめよ」
ままが　いいました。
「もう　８ぽんめ　だぞ。こんどこそ　こわすなよ」
ぱぱも　ちゅういしました。
けれども、たくみくんは　ぜんぜん　きにしません。

びゅんっと　ふっては　さかさまに　して　あそび、
ぐるぐる　まわしては　おともだちに　ぶつけて　しまいます。
がっこうへ　つくころには、かさぼねが　おれ、ぬのも　やぶれて　しまいました。

そのひ、たくみくんの　くらすに　てんこうせいが　やってきました。
「ぼく　いつき。よろしく」
たくみくんと　いつきくんは　ともだちに　なりました。
ほうかご、ふたりは　いっしょに　かえります。
「ぼくの　かさ　つかって　いいよ」
いつきくんが　かさを　わたして　きました。
さしてみると、ふしぎな　かさ　です。
８まいの　ぬのの　いろと　もようが　ぜんぶ　ちがっています。

「この　もよう　みおぼえが　ある」
きいろの　みずたま　もようは　１ぽんめに　こわした　かさと　おなじ。
ちいさな　かえる　もようは　２ほんめ、
はたらく　くるまの　もようは　３ぼんめ……、
そして、むじの　そらいろは　けさ　こわした　かさと　おなじ　でした。

おもわず　てを　のばして　かさに　ふれました。
ゆびさきに　ちくりと　いたみが　はしります。
「いたい！」
かさぼねの　つなぎめに　ゆびが　はさまって　しまいました。
こんどは　きゅうに　かさが　ぐるぐると　まわり　はじめました。
めが　まわる　うえ、からだの　あちこちへ　ぶつかって　いたいの　なんの。

「８ぽんの　かさの　うらみ　だよ」
いつきくんの　ぶきみな　こえが　あまぞらへ　すいこまれて　いきました。