おはなし
オオカミ少年
イソップ寓話のウソつきな少年のお話です。
- 文:東方明珠
- 声:結城ハイネ
- 絵:榎本はいほ
- 原作:イソップ寓話
本文
むかしむかしの おはなしです。
あおあおと しげる のはらに しょうねんが ねそべって いました。
しょうねんは ひつじかい です。
まいにち ぼくそうを たべる ひつじの ばんを しています。
「たいくつだな」
おんなじ ことの くりかえしでは あきてきました。
もっと おもしろい ことが あったら いいのに。
「そうだ」
ひつじかいは むくりと おきあがりました。
そして、おおきなこえで さけびました。
「おおかみだ。おおかみが きたぞ!」
むらの ひとびとが いえから とびだして きました。
みんな てに くわや すきを もっています。
「おおかみは どこだ」
その あわてた かおの おもしろいこと。
ひつじかいは くすくすわらいが とまりませんでした。
つぎのひも ひつじかいは おおごえを だしました。
「おおかみだ。おおかみが きたぞ!」
むらびとたちは まっさおに なって はしって きました。
「おおかみは どこだ」
「おおかみ なんか いないよ」
うそ だと わかると、みんな おこって かえって いきました。
ひつじかいは おなかを かかえて わらいました。
その つぎのひも、また つぎのひも ひじつかいは うそを つきました。
「おおかみだ。おおかみが きたぞ!」
かけつける むらびとは ひとり ふたりと へっていき、
そのうち だれも こなくなりました。
あるひの ことでした。
ひつじかいの めのまえに ぎんいろの けなみの おおかみが あらわれました。
おおかみは したなめずりを しながら ちかづいてきます。
ひつじかいは こわくなって さけびました。
「おおかみだー! おおかみが きたぞー!」
ところが だれも たすけに きては くれません。
むらびとたちは きっと ひつじかいが また うそを いっていると おもったのです。
おおかみは おそろしい うなりごえを あげ、
ひつじを いっぴきずつ のみこんで いきました。
「やめてよ」
おいはらおうと した ひつじかいも おおけがを しました。
とうとう ひつじは いっぴきも いなくなり、
はらの ふくれた おおかみは やまへ かえって いきました。
「もう うそなんか つかないよ」
ひつじかいは なきながら そらへ ちかいました。