• 文：東方明珠
• 声：川本知枝
• 絵：紺島
• 原作：グリム童話

本文

むかしむかしの　おはなしです。
もりの　なかに　くらす　よにん　かぞくが　いました。
まずしい　けれども、ヘンゼルと　グレーテルは　かしこい　きょうだい　でした。

あるばん、おかあさんの　ひそひそ　ごえが　きこえました。
「もう　たべものが　ないわ。こどもを　すてに　いきましょう」
きの　よわい　おとうさんは　いいなり　でした。
「どうしよう」
かなしむ　いもうとを　ヘンゼルは　はげましました。
「ぼくが　なんとかする」

つぎのひ　いっかは　さんぽへ　でかけました。
ヘンゼルは　しろい　こいしを　おきながら　あるきました。
「ここで　まって　いてね」
もりの　おくで　おかあさんは　おとうさんを　つれて　さっていきました。
よるに　なっても　むかえは　きません。

でも、だいじょうぶ。
つきに　てらされて　ひかる　いしが　ただしい　みちを　おしえてくれました。
「ただいま」
いえに　かえると　おとうさんは　よろこびました。
しかし　おかあさんは　なにも　いいませんでした。

つぎのひ　ふたりは　また　もりへ　おきざりに　されました。
きょうは　こいしが　なかったので、ヘンゼルは　パンを　ちぎって　おきました。
ところが、とりたちが　ぜんぶ　たべて　しまったのです。
まいごの　ふたりは　くたくたに　なるまで　あるきました。
すると、おかしの　いえが　あらわれました。

「ケーキの　におい」
「かべは　パンで、まどは　さとうだ。キャンディーの　はなも　さいている」
ふたりは　むちゅうで　おかしを　たべました。
そして、わたあめの　ベッドで　ぐっすり　ねむりました。
めが　さめると　まじょが　いました。
「おまえたちを　くって　やる」
おかしの　いえは　わな　だったのです。
「ふとらせた　ほうが　おいしそうだね」
まじょは　めが　あまり　よく　みえません　でした。

ヘンゼルを　おりに　いれて、グレーテルには　りょうりを　つくらせました。
まじょは　まいにち　ヘンゼルが　ふとったか　たしかめました。
「ゆびを　おだし」
ヘンゼルは　とりの　ほねを　さしだしました。
「いつまで　たっても　やせっぽちだね！」
なんにちか　して、まじょは　とうとう　かんしゃくを　おこしました。
「もう　がまん　ならない。かまどに　ひを　つけるんだ」
「グレーテルや、ひは　ぼうぼう　もえて　いるかい？」
このままでは　ヘンゼルが　たべられて　しまいます。

グレーテルは　ゆうきを　だしました。
「どうやって　みるの？」
「こうだよ」
まじょは　いらいら　しながら　かまどへ　くびを　つっこみました。
いま　です。
グレーテルは　ちから　いっぱい　まじょを　おし、とびらを　ばたんと　しめました。

じゆうに　なった　ふたりは　おかしの　いえを　とびだしました。
すると、おおきな　はくちょうが　あらわれて　ふたりを　いえまで　はこんで　くれました。
「おかえり」
いえに　かえると　おとうさんは　うれしなみだを　うかべました。
おかあさんは　あのあと、どく　きのこを　たべて　しんでしまったのです。
さんにんは　いつまでも　なかよく　くらしました。