おはなし
あんこくがっこう
ちょっぴり こわいお話「あんこくがっこう」です。
- 文章:東方明珠
- 朗読:長岡晃広(コトリボイス)
- 絵:森のくじら
本文
これは よにも ふしぎな おはなしです。
タナカくんの がっこうでは、こわい はなしが はやっていました。
「かがみの おばけ しってる?」
「しらない。どんなの?」
「かいだんの かがみに、きものの おんなのこが うつるんだって」
きょうも クラスメイトたちは おばけの はなしに はなを さかせています。
「かがみの おばけか」
タナカくんは かいだんを おりながら つぶやきました。
おどりばの かべには おおきな すがたみの かがみが あります。
これまで きにしたことは なかったけれど、つい みつめて しまいました。
そこには かいだんを おりる タナカくんが うつっています。
そして うしろに しろい きもの すがたの こどもが いました。
「……っ」
びっくりして ふりかえりましたが、だれも いません。
もういちど かがみを みました。
タナカくんしか うつって いません。
「きのせいか」
ほっと ためいきを つき、かいだんを おりました。
べつのひ、タナカくんは また ひとりで かいだんを おりていました。
ふと しょうめんの かがみを みると、うしろに だれかが うつっています。
きもの すがたの おんなのこ です。
あわてて ふりむくと、やっぱり だれも いません。
「どうなっているの?」
タナカくんは かいだんを かけおりて、かがみの まえに たちました。
なにか しかけが あるに きまっています。
きょうめんを のぞきこんだ しゅんかん――、
めのまえに ぼさぼさの かみの おんなのこが あらわれました!
びっくりする あまり、タナカくんは もっていた リコーダーを ふりあげました。
かがみを わろうと おもったのです。
けれども かがみに ふれたと どうじに、ぐいっと ひっぱられました。
きづくと まっくらな せかいに いました。
『あんこく がっこうへ ようこそ』
『なかよく しましょうね』
まわりには きものを きた おんなのこや おとこのこが たくさん います。
ここは かがみの なかに ある ゆうれいの がっこう だったのです。
それからというもの、かいだんの かがみには、ときどき タナカくんの すがたが うつるそうです。