おはなし
せんせいって?
もっと子どもとゆっくり向き合いたい先生と、もっと先生といっしょに遊びたい子どもたちとの、
少し悲しくて心あたたまるお話です。
- 文章:まつしたじゅんじ
- 絵:夏きこ
- 発行元:みらいパブリッシング
- 朗読:川本知枝
本文
「せんせい おそいよー。」
「かめみた~い!」
「“おはよう”じゃなくて、“おそよう”だー!」
「せんせいが ちこくしたら だめじゃん。」
「もう あさのかい はじまっちゃうよ。」
「ごめ~ん!チーターみたいに はしってきたんだけどね~。
いえの ようじが あったんだよ。」
ほんとうは まだ20ぷん はやいんだけどね…。
みんなが くるのが はやいんだけどね…。
「ごちそうさまー。」
「わあ! もう たべたの?」
「せんせい いっつも 3ぷん くらいで たべてるじゃん〜。」
「ねーねー。 なんで そんなに わんちゃんみたいに はやいの〜?」
「きゅうしょくが と~~~っても おいしいからだよ!」
ほんとうは はやく たべて みんなの テストや しゅくだいの まるつけを しないと いけないから…。
さくぶんや ノートを ちゃんと みたいから…。
ほんとうは みんなの つくえで いっしょに ゆっくり おしゃべりしながら たべたいんだよ。
ごめんね。
「ほっぺたが おおきな リスみたい♪」
「ぼくも まねしよう。」
「あしたは せんせいに かつぞー。」
「よく かんで たべないと からだに わるいよ。」
「せんせいって いつも いそがしそー。」
「みつばち みたい。」
「みつばちより いそがしそう!」
「たまには ほうかご いっしょに あそぼうよ。」
「わたしも あそびた~い。」
「ぼくも!」
「ごめん、かいぎが あるの…。」
ほうかご なんにもない ひが ほとんどないの。
ほんとうは みんなと あそんだり、おしゃべりしたいのに。
カピバラみたいに ゆっくり みんなと すごしたいなぁ。
「でも、おかあさんが せんせいって たくさん やすみが あって いいなー。って いってたよ。」
「わたしんちも なつやすみも ふゆやすみも あって いいなー。って いってたー。」
「パパなんか、せんせいは なまけものだー。って いってたよ。」
「あ~の~ね~、せんせいは なつやすみも ふゆやすみも はるやすみも がっこうに きているの!」
どようびも にちようびも おしごとを しているんだ。
はたらきアリみたいに せっせと、じゅぎょうの じゅんびをしたり、まるつけをしたり、せいせきをつけたり…。
「せんせいって カンガルーみたいだよね。」
「つよいし まもってくれるもん!」
「きょうしつって、カンガルーの ポケットみたい~!」
「どうして そんなに やさしいの?」
「ありがとう!!!やっと せんせいの いいところを きづいてくれたね!
せんせいが やさしいのは みんなのことが とっても たいせつだからだよ。」
せんせいは ぜんぜん やさしくないよ。
さっきも わすれものを したことや、じゅぎょうちゅうに ぼーっと していたことを ライオンみたいな おおきな こえで おこっていたし。
せんせいだって わすれものをしたり ぼーっと したりするのにね。
「ねえねえ、せんせいって どうして せんせいに なったの?」
「わかった!きゅうしょくが たべられるからでしょ?」
「べんきょうが すきだから?」
「せんせいは、せんせいが こどもの ときの せんせいに あこがれて なったんだよ。」
「こまったことが あったら たすけてくれて、でも、わるいことを したときは ほんきで しかってくれて…。」
「そんな せんせいに あこがれて なったんだよ。」
「ねえ、せんせいって どの ふくが にあうかなぁ?」
「みどりが いいよ!」
「じゃあ、わたしは きいろの これ!」
「この あかい おようふく!」
「ピンクも にあうよ!」
「ありがとう!せんせいの おしごとは ひとつの いろじゃ ないんだね…。」
「ホワイトも あるし、ブルーも オレンジもあるし…。いろんな いろが あるんだね!」
「せんせいだけじゃ なくて、ほかの おしごとも おなじだよね。」
「どんな おしごとも ひとつの いろ じゃないんだよね。」
「みんな、おとなに なったら どんな おしごとを してみたい?」
「ユーチューバー!」
「パティシエ!」
「がっこうの せんせい!」
「せいゆう!」
「まんがか!」
「プロやきゅうせんしゅ!」
「プロゲーマー!」
「ほいくし!」
「びようし!」
「いいなぁ~。みんなは まだ なんにでも なれるね。せんせいだったら…」
「やっぱり せんせいを やりたい。せんせいを ずっと ずっと つづけたい。」
「かのうせいと こうきしん いっぱいの みんなと すごせて しあわせだよ。」
「せんせいの おしごとは ほんとうに…」
「にじいろだよ!」