おはなし

河童の雨ごい

日本の昔話「河童の雨ごい」。

くわしくみる

  • 文章:東方明珠
  • 朗読:夏樹リオ(コトリボイス)
  • 絵:ゆめある

本文

むかしむかしの おはなしです。
とちぎけんの こかいがわに いたずらものの かっぱが すんでいました。
みちゆく ひとを おどろかせたり かわへ ひっぱりこんだり むらの はたけを あらしたりするので、ひとびとは こまっていました。

あるひ たびの おぼうさんが かっぱに たずねました。
「どうして わるさばかり するんだい?」
「おれは ひとりぼっちで さびしいんだ」
ほんとうは にんげんと なかよく したいのに うまく できないと いうのです。
「それなら いたずらを やめて にんげんの やくに たつ ことを しなさい」
かっぱは しっかりと うなずきました。

その としの なつは あめが いってきも ふりませんでした。
たんぼは ひあがり いどの みずも からっぽです。
「このままでは みんな しんでしまう」
むらびとたちは たかい やぐらを くんで あめを よぶ まじないを しました。
けれども まったく ききめが ありません。

そこへ かっぱが やってきました。
「おれに あまごいを させてくれ」
むらびとたちは かっぱを しんよう できません。
「また わるさを する つもりだろう?」
「それなら おれを なわで しばれば いい」

てを しばられた かっぱは やぐらの うえで ねがいました。
「どうか あめを ふらせてください」
いのりは なんにちも つづきました。
じりじりと てりつける たいようの したで なにも たべず なにも のまず いのり つづけました。
いっしょうけんめいな すがたを みて、むらびとは ひとり また ひとりと あつまってきて かっぱと いっしょに ねがいました。
「どうか あめを ふらせてください」

みんなの こころが ひとつに なったとき、
ぽつり、ぽつり、ざー。
とうとう あめが ふりました。
むらびとたちは てを とりあって よろこびました。
「かっぱよ、ありがとう」
けれども、かっぱは すでに いきを していませんでした。
めを とじて あめに うたれながら まんぞくそうに ほほえんで いました。
「つぎは にんげんに うまれかわって この むらに きておくれ」
むらびとたちは かっぱの はなしを かたりつぎ いつまでも わすれませんでした。

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