おはなし
養老の滝
日本の昔話「養老の滝」。
- 文章:東方明珠
- 梅田朱理(コトリボイス)
- 絵:ゆめある
本文
むかしむかしの おはなしです。
ぎふけんの やまおくに びょうきの とうさんと やさしい むすこが すんでいました。
むすこは ねたきりの とうさんの かんびょうを いっしょうけんめい していました。
あるひの こと。
「たきぎを ひろいに いってくる」
むすこは いつもの やまへ むかいました。
けれども、たきぎは ぜんぜん みつかりません。
しかたなく とおくの やままで いきました。
けわしい さかみちが つづき あしもとは ごつごつ しています。
いつのまにか あたりは すっかり くらくなって しまいました。
「こんやは ここで やすもう」
つかれた むすこは かれはの うえで ねむりました。
ふと きづくと、みずの ながれる おとが きこえてきます。
あたりは すこし あかるくなって いました。
「あまい においも する」
きになって あるきだした ときです。
つるりと あしもとが すべって、たにぞこへ おちてしまいました。
そこには みあげる ばかりの たきが ながれていました。
ごうごうと しぶきが とんで、うつくしい にじが かかっています。
「いいにおいは ここから していたんだ」
みずを すくって のんでみると、からだが ぽっと あつくなりました。
「とうさんに のませて あげよう」
ひょうたんに くんで、いそいで いえへ かえりました。
とうさんは ふとんから おきて まっていました。
「しんぱい したよ」
「ごめんね。でも、ふしぎな みずを みつけたんだ。のんでみて」
むすこに いわれて とうさんは みずを ひとくち のみました。
「これは おさけだ。なんて おいしいんだろう」
とうさんは よろこんで ひょうたんの なかみを のみほしました。
つぎのひ。
「きょうは とっても きぶんが いい」
おどろいたことに、とうさんの びょうきは すっかり なおっていたのです。
うわさを きいて、てんのうが たずねてきました。
「きっと ちちおや おもいの きもちが かみさまに つたわったのじゃ」
てんのうは むすこに たくさん ほうびを くれました。
そして、この たきを ろうじんを たいせつに するという いみの 『ようろうのたき』と なづけました。