おはなし
うぐいす長者
日本の昔話「うぐいす長者」。
- 文章:東方明珠
- 梅田朱理(コトリボイス)
- 絵:ゆめある
本文
むかしむかしの おはなしです。
ある ふゆの ひ、おちゃうりの おとこが みちに まよってしまいました。
むこうに きせつはずれの うめが さいています。
ちかづくと、うつくしい むすめが よにん あらわれました。
「わたしの いえへ いらっしゃい」
さそわれて ちょうじゃやしきへ いくと、ははおやが でてきました。
「ここは おんなだけの いえです。むすめの むこに なって いっしょに くらしませんか?」
おとこは ちょうじょの むこと なり まいにち あそんで くらしました。
はるに なりました。
「きょうは むすめたちと でかけてきます」
ははおやが いいました。
「たいくつ でしたら くらを みてください。ただし、よっつめの くらだけは あけては いけませんよ」
ひまに なった おとこは くらを のぞいてみることに しました。
ひとつめの くらを あけてみました。
そこには まっさおな うみが ひろがっていました。
「おどろいた」
まるで なつです。
かがやく たいようの もと うみあそびを たのしみました。
ふたつめの くらを あけました。
あかや きいろの こうようが ひろがっています。
「きれいだなあ」
けしきを ながめていると こころが あらわれるようでした。
みっつめの くらは ふゆでした。
ゆきと こおりが ほうせきの ように きらめいています。
「ああ たのしい」
ゆきあそびを たんのうしたあと、よっつめの くらへ むかいました。
「さいごは きっと はるだ」
みては いけないと いわれたのに。
どうしても がまんが できなくなり、あけてしまいました。
そこは おもったとおり はるでした。
あたたかな かぜが あまい かおりを はこんできます。
まんかいの うめの きの そばには ごわの うぐいすが いました。
「やくそくを やぶりましたね」
うぐいすが ははおやの こえで いいました。
「わたしたちは ここに すむ うぐいすです。ほんとうの すがたを みられたからには いっしょに くらせません」
「まってくれ」
しかし うぐいすたちは そらへ とびたって いきました。
やしきも くらも きえ、あとには かれた うめの きだけが ありました。